息子に先を越される

娘がまたも金曜日に発熱。全く元気そうで翌日には熱も下がったのだが一応ようすみに家にいたほうがよさそうだということで、土曜は息子を連れてルーブルへ。模写が決まったレンブラントの作品をもう一度きちんと見ておくことが目的。あとは息子へのサービス。息子はルーブルに行くのが好きだ。広い美術館を探検するのも楽しいようだし、もうひとつ、親父と二人で行くと地下にあるマクドナルドで食べられることがたまらない楽しみのようだ。そう、ルーブルで何か食べようと思ったら、地下のサンドイッチ屋か、マクドナルドくらいしか安く食べられるところがないのという我が家のふところ事情の悲しさだが(そう、ルーブルで水を買ったら2.5ユーロ(270円くらい?)、行くときは必ず水筒持参、忘れた場合は近くのスーパーなどで1ユーロくらいのを買う。)息子にはそれが何よりの楽しみなのだ。

レンブラントの作品、いよいよ実際に描き始めると思って観ると、これまでとはまた違って見えてくる。どのように描くかを考えながら見るので、具体的なパートごとの絵の具層の厚み、透明度、マチエールの表情など、実際に自分の絵の具箱をのぞきながら考えるような感覚で見るようになる。ネックレスの分厚いマチエールは、確かにしっかりとした厚みがあるが、しかし今の市販のシルバーホワイトでそのままのせたのでは、あの丸みのあるこってりとした感じは出ない。衣装の黒は前回みたときにはもう少し不透明に扱っているように思えたのだが、今回見ると、思ったより透明感がある。…きっと実際に始めてみると、それらもさらに違って見えてくるのかもしれない。…などと考えながらふと振り返ると息子が後ろでスケッチブックに絵を描いている。見ると、レンブラントの肖像画の一つを模写しているではないか。小学2年生の描くレンブラントの模写。マンガのような線描だが、顔の特徴はちゃんととらえている。あらま、すっかり息子に先を越されてしまった。親父は中学のころに初めて画集でレンブラントに出会い、ここに来るまで30年もかかってようやくたどり着いたところだというのに…。
しばらくレンブラントの部屋で過ごしたのち、ナポレオンの豪華な居室を通りピュジェの中庭へ。今日のふたつめのテーマ、「ルーブルで、ドラゴンを研究してみよう。」息子くらいの年齢の子は、ポケモンやら爆丸やら、怪物たちが戦うおもちゃや番組に興味があるようで、自由ノートを見ると、めいいっぱい自分で考えた怪物たちが描かれている。そこで、ルーブルの中であちこちの作品の中にみられるドラゴンを見つけて回ってどんなふうに表現されているか一緒に見てみようという親父の企画。ラファエロの作品をはじめ、絵画、彫刻、さまざまなところに出てくるドラゴンを見て回った。最後に着いたのがピュジェの中庭にある彫刻。はじっこのほうにあるのレリーフ上の作品で、注意していないと見過ごしてしまうようなものなのだが、よくできている。「じゃあ、描いてみようぜ。」ということで床に座って描き始めた。「こっちのドラゴンは日本のやつと比べてみんなでっかい羽が生えてるね。」などと言いながら描き始めるも、息子はすぐに終わってしまい、すでに飽き始めている。退屈なもんでカメラで絵を描いてる親父の写真を撮ったり、そこらで描いてる他の人の絵を見に行ったり、戻ってまた描き始めたと思ったら完全にドラゴンには背を向けて竜巻かなんかを描き始めている。まあ、こんなもんか。でも息子よ。君が今どれだけぜいたくな経験をしているのか、きっといつかわかる日が来るだろう。たぶんね。

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