20日目の仕事(仕上げ)

レンブラントの部屋はリシュリュー翼の3階、最上階にある。照明は基本的に天井部分の間接照明だが、同時に屋根からはいる自然光も取り入れるようになっており、今日のように天気のいい日は比較的明るく画面も見やすくなる。…なにはともあれ泣いても笑っても今日が最終日。顔を仕上げる。形の微調整、頬の赤味を入れる。やれるだけのことはやった。しかしどこまで満足できたかというと本当の満足には至っていない。なんだか展覧会の搬入直後の気分に似ている。もっとああしとけば、こうしとけば…、勝手に頭の中で反省会が始まっている感じ。模写だろうがオリジナルだろうが絵を描くってのはそんなものか。とにかくレンブラントのスピーディーでシンプルで無駄がなく、しかも的確な仕事に脱帽するばかりだ。自分の途中段階での仕事のもたつきが色を鈍らせる原因になっている。もう少しシンプルに大きな仕事ができたらもっと張りがある輝くような色彩が実現できるはずだ。
とはいえ実際に現物の前に立ち1カ月の間レンブラントと直に対話できたこの時間は他には代えられない体験だった。少なくともここで直に感じたことについては文献や図版から得た知識とは違うリアルなものとして今後語ることができるだろう。
気分を切り替えて次に向かうとしよう。次の許可が正式に下りるのは今月末。同じくレンブラント、今描いた作品の二つ隣の晩年の自画像だ。レンブラントは希望者が多く、通常すぐにはやらせてもらえないところ、(kay君は2,3カ月だったらしい。)続けて2枚という希望をなんとか通してくれたらしい。今回規定3カ月のところ1カ月で仕上げたことと、担当者の言葉では「館長があなたの模写をとてもいい仕事をしたと評価しての事だ」との話だが、それが本当かどうかはよくわからない。だいたい館長がわざわざ見に来るのだろうか。今回の滞在中の模写はこの2枚ということになった。当初希望していたもう1枚のフランドル派の作品については許可が下りなかった。さすがに3枚連続という所までは無理だったようだ。いずれにしても日程からしてもすでにタイムオーバー。バカンスの壁というやつだ。

考えてみたらもう残るフランス滞在も半年をきっている。折り返し地点を過ぎてしまった。やれることは今のうち全部やっておかなくては。それで帰国後はすっかり一文なし…。恐ろしい。

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