ブローニュのPont de sèvres(セーブル橋)を渡った先に国立陶磁器美術館がある。いわゆるセーブル焼の窯があるのだ。美術館に入ると1階はヨーロッパ、中東、南米、アジア各国古い焼き物たちのコレクションが展示されている。日本の焼き物も意外に多く、中には現代の作家たちの作品もある。2階に上るとセーブルの焼き物が古いものから新しいものまでずらっと並べられている。ヨーロッパの焼き物というとどうしてもぶりぶりの花柄模様みたいなものを想像してしまい、どうにも興味を持ちにくかったのだが、実際に観てみるとかなり見ごたえがある。想像していたぶりぶりとは違い、ずっと洗練された手仕事。ものすごい作り込み。ここまでやられると凄みを感じる。日本の絵付けと基本的に違うのは、どこまでも空間を表現しようとするところ。美術館の2階の入り口に額に入ったティツィアーノやラファエロのよくできた模写があるのだが、よくよく見ると、全部焼き物だった。かなり近づくまでわからないほどの出来栄え。東洋の絵付けは装飾性が強いが、こちらのものはどこまでも写実性を追求する。
実際我が家にこんな皿があっても全くしっくりこない気がするが、それでも日本の、土という素材そのものの持つ力を引き出した陶器の魅力とは対極的な位置にあるこのセーブルの焼き物の魅力というものは確かにあるなと感じる。