オペラグラスを買った。Kay君によると、ルーブル地下に売っている店がありそうだということで行ってみたが、なるほどアウトドア関係のものが置かれた店で確かにあったがそこにあるのは本格的な双眼鏡で値段が5000円から1万円を超えるものまで、ちょっと高い。そのうえでかくて重そうなものばかり。別にバードウォッチングに行くわけではないのでちょっと探しているものとは違うようだ。結局考えたらオペラグラスならオペラ座に行けばあるんじゃないかと昨日オペラ座の売店に行ってみた。9.5ユーロ(約1000円ほど)で折りたたみ式のびっくりするほど軽いやつが売っていた。プラスチック製の簡単なつくりのもの。おそらく見に来た人が使い捨て感覚で、またはお土産として買っていくものだろう。長持ちはしそうにないが、使うには充分だ。オペラ座のマーク入りという所がちょっと恥ずかしい。もうひとつ、本格的なおしゃれなやつも5000円程度だったか(ちょっと確かではないが。)売っていた。ちょっとそそられたがこちらは取っ手がついていて、模写をするのにこんなの使っていたら変な目で見られそうなのでやめといた。今度また蚤の市でも行って面白そうなのがあれば買ってみたい気もする。
そんなわけで、光ってよく見えなかった顔の部分も、ようやくオペラグラスで見ることができるようになった。もちろん実際に接近してみるほどにはマチエールなど、立体感はわからないが、それでもないのとはずいぶん違う。今日は早速顔を描き込むことにした。じかに色が入っているように見える顔だが、オペラグラスでよく見ると、ある程度デッドカラーで描き込んだ上に色がのっているよう見える。今一度、少々グレー調に戻しながら絵の具の厚みを持たせていく。シルバーホワイト+アイボリーブラック+バーントアンバー。場所によってイエローオーカーやバーントシェンナも加える。ある程度全体に絵の具がのってくると、絵具も画面上で自由に動かし易くなる。また、絵の具は粘りを出すため前日あたりからパレットに広げて少々乾燥を進めたものを使うようにしている。そのせいもあってか塗ってしばらくすると上から絵の具を置く際に下と完全に混ざるのではなく、半ば混ざるような、半ば上にのるような中間的な状態が作りやすく、一気に描き進めるのには都合がいい。恐らくはこんな絵の具状態の中で一気に描きながら、顔の部分など、グレーズ層を含め3から5層くらいで出来上がっているのではないだろうか。少なくともちまちま小さい作業を何度も重ねたのではないことは確かだ。
先日来何度も模写を見に来ている中国人の男性が今日も来ていた。実はちょっと話したら前の模写の時から見に来ていたらしい。月曜に一応名刺を渡しておいたのだが、今日は彼が自分の名刺を渡しに来てくれたらしい。みると西安にある美術大学の副教授という。あまりに熱心に見ているのでいろいろ話してみようと思うが自分が英語がだめなうえに、相手はそんな自分よりもっとダメらしく、ほとんど何も通じない。何とか通じた内容と言えば、彼は今シテ島に住んでいて、2月に来て、今月末には帰国するらしいこと。まさか、言葉が通じないフランス人以上にお隣の国中国人との会話に苦労するとは想像できなかった。もしかしたら筆談ならなんとかなるかもな。
帰り際にはフランス人男性から話しかけられる。話してみるとどうやら以前今描いているこのレンブラントの自画像を同じように模写したことのある人らしい。うれしくなって話しかけてみたらしく、いろいろ喋っていたがわかったのは何分の1だろう。やはり同じように厚みを持った透明な黒で苦労したらしく、この黒がいいよと自分が使った絵の具名をメモしてくれた。
Kay君はいよいよ完成が近づいてきた。今日はどうやら行き詰っていたらしく、途中目が合うと、交代しようよ。という。冗談かと思って聞いていたが、後で近くに行ってみるといきなり持っている筆を渡そうとする。どこかで見たような仕草。そう、カルチャーセンターの生徒、Iさんあたりがよくやるあれだ。という訳でMartin君に続き2人目の手が彼の絵に入ることに。お客も多く、自分の荷物も気になるのでせいぜい5分のデモンストレーション。こんなことでいいのかねKay君。