今日は見た目にはほとんどわからない地味な作業。コスチューム部分の描き込み。一見非常に薄塗りのように見えるが、よく観察すると意外にしっかり絵の具がのって描き込まれているところがある。襟の部分の一部には面相筆で描き込まれた部分も。最終的にその描き込みはほとんど目立たないものだが、ラフに見えて意外にしっかり描かれているところは緻密だ。そろそろ下層書きの段階を終えなければと思うが、どの辺で区切りをつけるかは悩むところだ。とりあえず、来週から2週間はバカンス期間とかでお客が増えるらしく、模写はできなくなる。明日で一応の下層書き段階は終えることとして、しっかり乾燥させた後、5月頭からグレーズに入るとしようか。実は今日も中国人画家が来ていた。そこで一緒に食事でもしようかと話しかけ、仕事の後、近所のカフェでしばらく話すことに。前に書いたとおり英語もほとんど通じないので紙に漢字で単語を書きながらの会話。ちょっとずつ話が通じてきた。彼は中国、西安にある美術大学の教師、宋さん。なんと同い年だ。何を教えているのかと聞くと、これまた同じように絵画組成…技法材料についての授業を担当しているという。ムサビの授業でもやっているように、学生に模写をやらせたりもしているらしい。作品写真をいくつか見せてもらったが、いわゆる中国の写実系の仕事。レンブラントの模写に使っている白は何かと聞かれたので鉛白だと答えると、中国では毒物扱いで手に入らないという。今じゃ日本でしか使われてないのか。どんな画溶液を使っているのかと聞くと、中国ではそれほど画溶液の種類がないのだという。それで、リンシードを大きな容器に水と共に入れ、日にさらして自家製のサンシックンドオイルを作ったり、鉛を入れて加熱したりしているという。驚いた。サンシックンドリンシードと、ブラックオイル。ほぼ、ムサビでやっているのと同じことをやっている。言葉の問題でそれ以上、どうやって使っているのか、どういう理由で使っているのか…、まで聞きだすことはできなかった。また樹脂についてもどう考えているのかも聞けなかったが、最近の分析結果についてはまだ情報として知ってはいないようだった。しかし不思議なものだ。遠くフランスまで来て、全く接点のなかったような中国の、同じようなことをしている同じ年の絵描きと知り合いになろうとは。
おまけ。本日のKay君。作品の写真を撮ってくれというので撮ってあげる。「写真のほうがいいじゃないか!!」と、本人大喜び。でも実際大したものです。