Kay君にモデルを頼んでオイルスケッチをしに行った。前回はモデル2人を使って描かせてもらったが、もう少し時間をかけてやってみたかったためだ。試しているメディウムで果たして自然に暗部の透明な厚塗りが成立するのかどうか、もう少し試してみたかった。自画像でもいいのだが、やはり西洋人の、作りがはっきりした明暗でとらえやすい顔でやってみたかった。いつものように昼ごろにつき、昼ごはんをゆっくり食べ、絵についてああでもないこうでもないとしゃべりながら、実際に始めたのは3時ごろ。あらかじめ、茶系のインプリマトゥーラを施した板地に、まずは筆の滑りを良くするため全面にメディウムを薄く塗布し、あとは下描きなしで直接描き始める。初めにバンダイクブラウンで大きく形をとりながら影のトーンを入れていく。ある程度調子ができたところで今度は明部にシルバーホワイトを多く含む絵の具をしっかりのせていく。影で透明感を生かしたい部分はさらに筆先にメディウムを含ませて希釈しながら描いて行く。
髪の毛などは、筆の勢いで形を追いながら、明部には下地の明るさを生かす部分と、細筆で白プラスイエローオーカープラス、バーントシェンナで作った不透明なハイライトを画面上を軽く掃くようにのせていく部分の2種類を使い分ける。時間にして約3時間。もう少し硬さのない形にしたかったが、取りあえず筆を置くことにした。問題の筆跡の残る透明な厚塗りについては無理してそうするわけでなく、ただ、透明にしっかりのせようと思うだけで自然に生じる。感触としては今までの他のどの方法よりよさそうだ。まだ多少慣れていないので、思ったように自由に絵の具が動かせない部分はあるが、かなりのメディウム量になるにもかかわらず、ヌルヌル滑って描きづらいということはなく、色を重ねる際にも濡れた状態にもかかわらず完全に下の絵の具と混ざるのではなく、軽くのせると下の絵の具の上に乗る感じがあって、濁りがあまりなく、ある程度透明感が生かせる。ちょうど半乾きの上に描くときの描き易さに近い、グレーズとぼかしの両方ができる状態とでもいうのだろうか。もうあと何枚かやってみないと本当のところはわからないが、今日の感触は悪くなかった。乾いてからまたグレーズを重ねてみたいと思う。写真は今日の状態と、その部分、そして厚みがわかるよう斜光で撮ったもの。
終って片付けているころにMartin君が入ってきた。入れ替わりに準備を始める。「君もKayを描くの ?」と聞くと、違う。自画像だという。彼曰く、「Kayはオサムの前ではちゃんとしてるだろうけど、俺の前じゃ、まるでじっとしちゃいないよ。まるで子供みたいに。」
ところで今試しているメディウムについてはまた時間がある時に書くことにしよう。それほど特殊な事をやっているわけではない。ただ与えられた条件の中で 試行錯誤した結果出てきたもの。今日もまだ寝不足気味なので書く気力がない。