今日で一応全体に絵の具が置かれた。恐らくあと2日くらいで仕上がるだろう。実物とはかけ離れていくが、全体を調整するためグレーズ、スフマートを数回重ねる必要がありそうだ。現物のほうはあまりそれらを何層も重ねてはいないのだが。あまり調整をやり過ぎると絵の勢いが死んで、色も鈍ってしまう。いじりすぎないように注意が必要だ。
話は変わるが、昨日、ドラクロア記念館に行ってきた。ドラクロアが晩年使っていた住居とアトリエが小さな美術館として公開されている。注意していないと気付かないような場所にひっそりとあり、見に来る人もまばら。ロダン美術館のように大量に作品が展示されているという訳ではないが、ドラクロアがどんな環境で制作していたのかを知るにはいい美術館だ。静かな中庭を望むアトリエにはその中庭に面した大きな窓と、天窓がある。実際はかなり明るいはずだが、現在は反射光で作品が見にくくなるのを防ぐためか、中庭に面した窓はカーテンが閉められ、上からの光のみになっている。少々薄暗くはあるが、上からの光なのでそれなりの明るさはある。作品に混ざってドラクロアが使用した絵の具のキャビネット、そしてパレットなども展示されている。パレットには数十色の絵の具が少量ずつ、丁寧に並べられている。豪快な彼の画風からはあまり想像できないような几帳面なパレット。この絵の具の出された量からして恐らく小品を描いていたのだろうが、しかし、ここまでたくさんの色を出す必要性とは何なのだろうかと考えさせられる。色そのものはほこりまみれで今やどんな色を使っていたのかもわからないような状態だが、あらかじめ自分の使いやすいように調合した中間色のようなものが並んでいるようにも見える。どうも色とりどりの鮮やかなパレットのようには見えない。いったい彼はどんなふうに絵の具を扱っていたのだろうか。なんだか不思議な思いで美術館を後にした。