イタリアその1―ローマ。

先週イタリアに行ってきた。ローマ、フィレンツェ、ヴェネツィア。それぞれにはバチカン、ウフィッツィー、アカデミア美術館がある。どこも学生のころに一度訪れた場所だが、帰る前にもう一度訪れてみたかった。以前訪れたのはもう20年以上前。まだこちらの観光シーズン前の3月の事。もちろんその頃はまだ家族もなく、友達3人での身軽な旅行、今とはずいぶん状況は違う。今回は家族4人、2人の子連れでバカンスまっただ中のイタリア行きだ。パリである程度鍛えているとはいえ、どう考えても無防備な観光客丸出しにならざるを得ないので、さぞかしスリたちのいい標的になる事だろうと少々緊張気味の出発となった。
ローマへは飛行機で入り、電車に乗ってテルミニ駅まで揺られていく。電車の中を行き来するおじさん達が子供を見ては何やらにっこり笑って話しかけたり頭をくしゃくしゃっとなでていく。フランスでも子供を見るとにっこり笑ったり「かわいいね。」と話しかけてくる人は結構多いがいきなり頭をくしゃくしゃっとするところまではあまり行かない。いかにもイタリアらしい。ホテルは子供を見ながら荷物を持って不慣れな場所をうろうろするのを避けるために、便利さを優先して駅のすぐ近くの安めのところを探して予約しておいた。歩いて3分ほどのそのホテルは古い建物の2階部分にあり、決して雰囲気のある宿ではなかったが、フロントの男性がすでにこちらの名前まですべて覚えていてくれ、観光の案内から近くの食堂やスーパーについてまで非常に親切に教えてくれて、最初の宿としては申し分なかった。ホテルから歩いて行ける距離にコロッセオ、フォロ・ロマーノ、ヴェネツィア広場などがある。パリよりかなり暑いこともあり、さっそくジェラートを買って食べながら近所を散歩する。学生のころに来た時はあわただしくバチカンだけを見て、あとは通り過ぎただけだったからか、なんとなく駅前の治安が悪そうで、全体に薄汚れた町と言ったイメージを持っていたが、今回ゆっくり街を歩いてみたからか、少しそのイメージが変わった。妻が言ったのだが「なんだか馴染む。」そんな感じ。気候的にもパリよりずっと日本に近いのか、街の緑もなんだか暴れた感じ。何もかも整然と整っているパリよりも親近感を覚えるのかもしれない。街が整然としきれないのには他にも理由がありそうだ。第一に微妙に地形に起伏がある。まっすぐに道を通そうと思っても左右にぴちっとシンメトリーという訳にはいかないのだ。その上いたるところにローマ時代の遺跡がある。すでにキリストの時代からある町の上に街が重ねて作られてきたのだ。それほど単純にはいかないのは当然のこと。街の印象はバチカンも含め、パリよりもダイナミックでおおらかに思える。サン・ピエトロ寺院など、どこまでも手を抜かず見事に作り込まれた建築物なのだが、それでも北方の、例えばベルギーの建築物から感じる重さや硬さと言った印象よりはむしろ軽やかさを感じてしまうのはなぜだろう。それにしても人が多い。パリよりもずっと多いんじゃないだろうか。こんなにワサワサ人だらけの中、悠然とコロッセオの中で昼寝している猫の姿が印象的だった。

2日目は知り合いの韓国人の紹介で韓国人にガイドをお願いすることにした。今回どうしても行っておかなければならない場所があった。「真実の口。」息子は小さいころからじいちゃんに「イタリアのローマに行くと真実の口というのがあってうそつきはその口に手を入れると食いつかれて抜けなくなっちゃうんだ。」と聞かされていた。以来何か悪いことをすると、「イタリアに連れてっちゃうぞ!」というのが我が家のやり方になってしまっていた。おかげで息子が一番行きたくない国ナンバー1はイタリア、今回フランスに来ることが決まってからもイタリアだけは行きたくないと言っていた因縁の場所。すでにじいちゃんの話は嘘だとはなんとなくわかっているものの、それでもいざ真実の口の前の列に並んだ時の息子の顔はかなり引きつっていた。ガイドをしてくれた人は、面白がって、「ちゃんと包帯持ってきた?この前来た子は包帯があんまり質がよくなくて血が止まらなくて大変だったんだよ。」とか、「よーく手を見せて…最後に観る自分の手。」なんて言っていた。無事にお決まりの記念撮影を終えた息子。心底ほっとしたようだった。
つづく。

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