サンタ・ルチアの駅から出るとそこはもう、いきなりの別世界だ。緑がかった運河の水の上を盛んに行きかうボートやゴンドラ。20年前と全く変わることはない。まずは駅前から水上バス(ヴァポレット)に乗ってサン・マルコに向かう。今回の宿はこの旅行の中で我々としては一番奮発したホテルだ。とはいっても別に5つ星4つ星の高級ホテルという訳ではない。
値段的にはフィレンツェの宿とほとんど同じ。やはり日本のホテルを考えればかなり安めのように思う。サンマルコの近くで船を降り、前回書いたとおりの事態のため泣きべそをかく息子を連れてホテルに向かった。
本当に今回の旅行はホテル運がいい。今回もたまたま入った部屋がこのホテルの中で一番眺めのいい部屋だった。大きな窓の正面には運河。行き来するゴンドラを部屋に居ながらにして眺められる。ちょうど部屋の前の空間は音がよく反響する場所らしく、わざわざゴンドラをそこに泊めてカンツォーネを歌うので、ベランダに出るだけでヴェネツィア気分に充分浸ることができる。しばらく持ってきた飲み物とお菓子を口にしながらぼーっと時間を過ごす。ゴンドラの乗客たちも気分がいいのだろう。子供達に向かって手を振ったり、「チャオ!」と声をかけてくる。見るとゴンドラに乗っている人達のうち、大半は中国人。景気の良さを反映しているのか。
しばらくして散策に出る。サンマルコ広場のカフェではあちこちで見事な生演奏が奏でられている。一杯飲みたいところだが、コーヒーを飲むだけでもかなりの値段になるらしい。周りで聞いている分にはただなので、気分を味わうだけにする。部屋で聞くゴンドラのカンツォーネと同じだ。細い路地に入るとどこもベネツィアングラスや仮面などを売る店が立ち並び、賑わっている。ベネツィアングラスのアクセサリーやらペーパーウェイトなど、高いのかと思いきや、意外にも安いものが多いのには驚いた。お土産用と言ってしまえばそれまでだが、それでも結構面白いものはある。食事をしようかとあちこち見ながら歩いていると、ちょっとした外の広いスペースにテーブルを並べている気持ちの良さそうな店があった。出ているメニューをちょっと眺め、少々高そうだと通り過ぎようとするが、と店員が寄ってきてあんなもの、こんなものがあると話しかけてくる。他を歩きまわって探すのも疲れそうだし感じは良さそうなのでまあいいかと、そこで食べることにした。夕方の涼しい風が心地よい。スパゲッティーやらニヨッキやらラザニアやらを頼みゆっくり食べる。そろそろ帰ろうかと会計をすますがやけに値段が高い。見るとテーブルチャージ料だけで4人分で10ユーロ。他に税金など加算されてかなりの上乗せ。料理の内容は先日のYELLOWと比べてかなりしょぼかっただけになんだかぼられた気分。やっぱり客引きが強いところはやめといた方がよかったかな。