日本という外国

別に日本のことが外国に思えるほど長く外国にいたわけではない。たった一年のフランス生活。それでも帰ってみると行く前は当たり前のように思えたこともなんだか新鮮に感じられたり、やけにありがたく思えたり、時にはちょっと滑稽に見えたりするから面白い。

まずは空港からのリムジンバスの乗り場にて。並び始めた乗客の預け荷物を整理してくれる係りの人。前から順に番号札をつけて、てきぱきと荷物を並べていく。妻が感激。「ちゃんと荷物を運んでくれるよ!」向こうでバスに乗るようなとき、たいがい荷物は自分で入れてたっけ。走り出すバスの中での運転手のアナウンス。「皆様本日は?バスをご利用いただきましてありがとうございます。わたくし本日運転を務めさせていただきます?と申します。どうぞよろしくお願いいたします。」…なんと丁寧なあいさつ!低姿勢な言葉遣い!さすがに自己紹介までされた時には思わずニヤニヤしてしまう。「何もそこまですることはないんじゃないかなあ…。」もちろんフランスでは運転手の言ってる内容なんてわかっちゃいなかったわけだが、少なくとももうちょっと事務的だったと思う。ベルギーからパリに帰る高速バスの運転手なんか、1時間近くの遅れになっていたにもかかわらず、あともうちょっとでパリというところで突然サービスエリアに入り、25分間休みます。なんて言って客たちを驚かせていた。

帰ってすぐに、スーパーに買い物に行った時のこと。玄米を買おうと思っていたのに以前あった場所に玄米がなかった。それほど混んではいなかったので近くのレジの人に聞いてみると、はっきりわからないようだ。すぐさま「ちょっとお待ちください。」と小走りに担当者を探しに行く。間もなく戻ってきて「今、在庫を切らしておりまして、また入ると思いますが、今のところいつになるかわからないようです。大変申し訳ありません。」すでにこの中に驚きのポイントが3つも入っている。1つ目。自分でわからないときはわかる人に確認を取ってくれること。フランスではたいがい自分が知らなければ肩をすくめて終わるか、あっちに行って聞けと言われるか、さもなくばでたらめを教える。…というのがほとんどだった。2つ目。小走り。フランスではジョギングをする人以外ではほとんど走っている人を見たことがない。赤信号を渡るときでも走らない。実に堂々としたもの。ましてやお客のために走るなんて…。向こうのスーパー”Carfour”で買い物をした時のこと、レジの人が値段がわからないものがあった時、客である自分のほうがが見に行かされた。日本じゃいたるところで店員が走っている。向こうじゃレジの人はドカンと椅子に座って動かない。客のほうがかごから商品を出して計算してもらい、その場で客が全部自分のカゴに詰めなおすのだ。日本じゃ店員のほうが全部カゴからカゴへ、重い物がちゃんと下に来るように丁寧に詰めてくれ、時にはかごから袋に詰めるテーブルまで運んでくれたりする。妻が驚いたのは自分がお金を払っている間に、レジの人はすでに片手でお金のやり取りをしながらもう片方の手では次の客のレジ打ち作業を開始していたこと。そのあまりの手際よさはまさに職人だ。3つ目。商品がないとちゃんと謝ること。これも当たり前みたいなことだが向こうではそうじゃない。こちらでいうヨドバシカメラやコジマ電気みたいな電化製品の店、”DARTY”。いかにもおしゃれで品揃えもいいように見えるが、いざ、「これください。」というとたいがい「ありません。」と言われる。それで終わり。いつ入りますでも、入ったら連絡差し上げましょうか?でもない。もちろん「申し訳ありません。」など聞いたことがない。サービスという点でいえばやっぱり日本のほうがダントツにきめ細やかで親切だ。ありがたすぎて申し訳ないほど。でもしばらくすればこれも当たり前になっちゃうんだろうな。それにぶっきらぼうなフランスのお店もちょっと懐かしくもある。

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