今日、春風洞が木曜日から始まるヴワール展に出品する絵を取りに来た。帰国後最初の油彩作品だ。誰もが知っているモンサンミッシェルを描いたもの。5月に訪れた時にスケッチした中からパリに帰って小さいサイズの油絵で描きはじめ、帰国後、それをさらに8号のパネルで新たに描きあげた。…これほどわかりやすい観光名所を描くのは実は結構勇気がいるものだが、ひたすら遠くまで広がる何もない大地の上にあって、明け方の雲間から差し込むスポットのような日の光に照らされた幾何学的なその姿はやはり印象的だった。もしかしたらエジプトでピラミッドを見たら同じように感じるのか…、それはよくわからないが、とにかく描いてみたいと思ったのは確かだ。あたかも自然の島と人工の建築物が混然一体となった巨大なモニュメントのごとき円錐形のモンサンミッシェルそのものが主役であることに間違いはないのだが、かえってその存在は周囲一帯の広大な大地の広がりを際立たせる。
今回の作品は渡仏前の作品と技法的な違いがある。1年間、レンブラントと付き合ってきて得たものを自身の作品でも適用してみようという試みでもあり、この先もしばらくは模索が続くだろう。ただしそれは”レンブラント風な”絵を描こうとするものではない。
具体的な大きな違いはまずメディウムを変えたことだ。以前はProcessのページでも書いている通り、スタンドオイルを主体として生のリンシード、わずかのルツーセの組合わせで描いていたが、今回はサンシックンドリンシードを主体とし、ブラックオイルとわずかな卵黄の組み合わせで描いている。詳しい処方についてはいずれここで書いていこうと思っているが、まだ試行錯誤の最中であり、今は書くのは控えておく。描くにあたっての違いは、特に透明な絵の具の扱いのキレがいいので以前より下層のインプリマトゥーラの色調を生かすことでの透明感が生かしやすくなったということか。クローズアップの画像を見ると、下層の茶色がそこここで透けて見えるのがわかるかと思う。画像は多少下層の茶色が強めに出ている。実物はこれほどはっきりわかりやすく見えるわけではない。
今日作品を収めたわけだが、今回はまだ額が手元に来ていなかったので、額縁がうまく合うかどうかは実際展覧会に行ってみなければわからない。会場でどう見えるのか、楽しみなような怖いような…。
ところで先日新宿伊勢丹でやっている永山裕子さんの展覧会場、いつもの永山さんらしい静物画に交じって一角に「ちゃんぽんシャンソンショー」とか、「キュルキュルfff(フォルテフォルテ?ッシモ)」とかいうタイトルで、アナウンサーの安住紳一郎さんがみょうちきりんなコスチュームで歌ったり踊ったりしているポスター風な作品が並んでいる。永山さんに「いったいどういう関係ですか?」と聞くと、恥ずかしそうな顔をしながら「もしパソコン開く時間があったら聴いてみて!」とその場でメモを書いて渡された。「散骨イラストレーターの正体」…なんじゃこりゃ???帰って言われるままに聴いてみた。いや、ほんとにおもしろすぎます。興味のある人はぜひ一度聞いてみてください。
http://www.tbs.co.jp/radio/nichiten/pod/20111002.html