暖かくなるにつれ、庭の植物の勢いも日々加速している。1か月前、伸び始めたばかりと思っていた「ばいも」は今や可憐な花をいっぱいに付けている。ちらほら咲き始めたと思った水仙も今が最盛期、気付くとあんずの花は散り始めている。椿の花はまだまだこれから、勝手に増え広がったムラサキハナナは庭をうっすら紫色に染め始め、よく見るとスミレやヒトリシズカが日陰のあちこちに咲き、ギボウシがニョキニョキ頭をのぞかせ始めている。そろそろ木々も新緑の明るい緑で染まるだろう…。昨日は今年初めてウグイスの声を聞いた。春だねえ。
昨日は夕方のカルチャーセンター(自由が丘、とうきゅうBE)の日だったが、その前に月島でやっているムサビの大学院生、桂典子の個展に寄ってみた。
http://www.galleryartcomposition.com/japanese/main.htm
彼女は3年生の組成室の授業の時、ほかの学生が1か月かかっても仕上げられなかった模写を2週間もかからずに見事に仕上げたうえ、残る時間で同じ技法を応用してオリジナル作品まで仕上げてしまったことで今でも印象が残っている。絵描きの中にはまれに、あれこれ必死に頭をひねって作品をひねり出すというよりは、勝手に内側からイメージが湧き上がってくるようなタイプの人がいるが、彼女はそんな一人だった。以前は例えば弁当の中身、米粒の一つ一つまでに手足が生えてうようようごめいているような独特の平面作品を描いていたが、大学院に入ってからは球体の上にそれらを展開するようなことを始めていた。1年間見なかったうちにどんな作品を描くようになったかとちょっと興味があった。
大きな会場にこれでもかというほどに並べられた球体。大きなものは直径2メートルほどはあるだろうか。眼球や卵子という人体からイメージされたらしい形態と描き込みは、以前の一種コミカルな部分部分のキャラクターの集合体というより、一つの球体をめぐってイメージされる全体を形作るための部分として機能している。1年前に見た初めて球体に描いたという作品と比べて技術的に見てもかなり上達しているし、平面から球体という立体に移したことから発生する新たな問題に彼女なりに対応しようとする姿勢が見て取れて興味深かった。
いずれにしても若い子たちが精いっぱいやりきっている姿を見るのはうれしいものだ。