相模屋での水無月会も今日で終わった。なんだか始まったばかりのように思っていたが…。出品作の画像、遅れてしまったがworksのほうに載せておいた。ここではちょっと制作過程と部分画像でも載せてみようか。
前にも書いたが今回の作品は2日間で描き上げている。油絵の具を用いたスケッチ。これはルーブルでの模写を通してレンブラントのメディウムについての考察の中から試行錯誤する過程でたどり着いた一つの方法(この辺のことは、去年、の2月から6月あたりのブログにぐちゃぐちゃと書いています。)を自分なりに消化して作品化したものだが、それは特別”レンブラント風”を目指しているというわけではない。ただ、レンブラントの作品の、透明感と体質感を伴う暗部の表現の不思議に取り組んだ中から想定し得たメディウムは、実際使ってみると短期間に一気に描き進めるのに適したメディウムだった。その描き心地は自分にとっては新鮮で、今回の作品は、今後、何かその特性を生かした表現ができないかという試みでもあった。
手順としては茶系のインプリマトゥーラを施した板の上の白亜地にバンダイクブラウンで粗描きし、乾かないうちにシルバーホワイトを多く含むグレーから茶系の絵の具で明部をモデリングしていく。暗部については下層の地色をつぶすことなく透明な暗色のみで描き進める。すべて合わせて3‐4時間の下層描き。
数日後、乾いた上からグレーズにより色を深めて完成。…約2‐3時間の作業。
暗部はかなりメディウム量が多いオイルリッチな描き方になるが、通常半乾きの状態まで待たないと、下の色と混ざってしまうため、髪の毛のハイライトのシャープな線など引けないのだが、このメディウムはかなり早い段階からそれが可能で、比較的濁りが少ないまま描き進めることができる。スピーディーな筆さばきである程、下層と混ざることなくのせるような感じで描けるので、描きながらおのずと筆が踊りリズムのあるタッチを生みやすい。
今のところ、2か月以上時間をかけて描く作品と、このオイルスケッチの間には自分の感覚の中でまだ距離があるようにも思えるが、今後、時間をかけて描く作品の中にもこのオイルスケッチの中にある勢いやキレのような要素が矛盾なく取り込めないだろうかと考えている。いや、すでに帰国後の作品の中にはある部分、そんなものが入り始めていると思う。何か隅々までぴっちり几帳面な説明をするというのではなく、ごろっとした目の前の存在感を描けないもんかと思う。
さて、今後どうなっていくのでしょう。それは正直私にもわかりません。
…ところで肝心のメディウムのことだが、もうしばらく試行錯誤してみてそのうちもう少し細かいことでも書こうかと思っている。来年あたりには書けるかな?