Gallery Suchiの須知さんとの出会いは古い。まだ20代のころ、はじめて春風洞の社長が家を訪ねてきた日、社長の車を運転してきたのが彼だった。その時は家に上がるわけでもなく近くの川沿いで車の中に待機していたため、ほとんど顔を合わせることすらなかった。私が新米画家なら彼は新入社員、そんな意味では20年以上たった今も、同期のような感覚がある。その後須知さんは春風洞内で私の担当になり、喧嘩したりしながらずっと付き合いが続いていた。数年前、独立。茅場町の古いビルに今のGallery Suchiを構えることになる。
今や画廊オーナーの須知さんだが、下積みの長かった彼は今でもフットワークが軽く、その持ち味を生かして精力的に活動している。そんな須知さんから今回の企画を持ちかけられたのは帰国後、すぐだったろうか。昨今、軽い作品が増えつつある中にあって、はやりに流されることのないしっかりと手ごたえのある”重い”仕事をしている人たちのグループ展をやりたい。…とのことだった。展覧会名「重力」。渡されたリストを見ると、メンバーの中には大学の先輩で今は北海道に拠点を移している松村繁さん、最近展覧会で一緒になることの多い渡抜亮君など、自分にとって”ゆかりの”作家が多かった。学生のころ、どこの公募団体に出すか迷っていたころ、松村さんはすでに白日会に出品し、賞を重ねていた。自分が白日会に出すきっかけともなった人の一人だ。当時、写実系の若手達が集められ始めた”はしり”だった中にあってすでにわれわれの先を走っていた「スター選手」だった。大学にいた時には実際会ったことはなかったが、白日会の授賞式で同席した際に初めて出会い、(その時言われた言葉は忘れられない。表彰台に上がった私のことを見て「お父さんの代理かなんかかと思った。」だって。)その後、何枚かの作品でモデルにもなってもらっている。とにかく昔からうまい人だった。北海道に帰ってからしばらく作品を見る機会が減ってしまっただけにどんな作品が見られるのか楽しみだ。
渡抜君と出会ったのは数年前。当時三越での展覧会、「ざ・てわざ」の企画に向けてメンバーを探し始めた最中だった。まだ三越でやるかどこでやるかも決まっていなかった頃だったような気がする。五味さん、大畑さん、島村君あたりの人たちと、「だれかいい人いないかなあ。若手で手応えのある奴いないか?」なんてこと言ってた時、たまたまムサビの近くで展覧会をしていたのが彼だった。ふらっと入ってみていきなり釘付けになり、「見つけた!誰だこれ。」…と、とりあえず画廊の人にこちらの連絡先を教え、一度連絡がほしいと伝言したのが初めだった。
リストを渡された時にはまだ入っていなかったが、その後、須知さんから、ほかに刺激になるような作家はいないかと持ちかけられ、それならぜひ、と加えてもらったのが陶芸の濱中史朗さん。彼との出会いや作品については以前ブログにも書いた。
以前から「アートの方面に興味がある」と聞いていたこともあり、こちらとしても機会があれば作品を並べてみたいと思っていただけに、ぜひ。とお願いしたものだ。ちょうどその時彼が個展を開いていたので須知さんに早速観に行ってもらい、一発GOサインとなったわけだ。
時の重さを感じる古いビルの静かな一室にあるGallery Suchi は決して広くはない。こぢんまりとしたスペースのため、大作を見せるのには向かないかもしれないが、時間のかかる作品をじっくりとみてもらうにはちょうどいいスペースかもしれない。ここのいいところはメンバーの選定についても作品の内容についても、柔軟に作り手の意見を聞きながらかなり自由にやらせてくれるところだろう。今回実は「せっかくやるんなら壁の色、別の色に塗り直そうよ。」と言っていたのだが、結局それは途中で頓挫した。まあ、そこまでは”御予算の関係で”こちらも無理は言えなかったが、少なくともそんなことを平気で言い出せる雰囲気があることは確かだ。
絵画、彫刻、陶芸…ジャンルにとらわれることなく集められた作家。どんな作品が見られるのか、自分自身が楽しみに思える展覧会だと思う。よかったらご覧ください。
…それよりなによりまずは自分の作品、何とか間に合わせなくては…。(ちなみに広告用のこの画像は作品中のごくごく1部分を切り取ったもの。何とか宣伝用にそこだけ優先的に描きこんだという、苦肉の策。実際はその10倍以上の面積がある。)