Kay君、日本の美術雑誌の表紙を飾る

まあなんということか、私を差し置いて「美術の窓」の表紙を飾るとは!

20日発売の「美術の窓」、今回の特集のタイトルは「摸写から学ぶ絵画の技法」…つまり摸写の特集。晴れて表紙を飾ることになったのは、私の描いた模写…ではなく私が撮った、”ルーブルで模写中のKay君”の写真だった。

美術の窓 2012年 10月号 模写から学ぶ絵画技法

「美術の窓」で模写の特集をやろうとしているという話はだいぶ前から聞いていたが、それが実際に動き出したのは先月のこと。メールで依頼があった。ルーブルで描いてきた摸写の制作過程について書いてほしいというものだった。実はすでに摸写については昨年の12月号で2ページほど書いている。そこであまり重複しても面白くないと思い、主に摸写に際してどんな事前の準備をし、また模写を通して何を考え自作にどう取り入れていったかの過程を含めて書くことを提案し、実際にそのような内容を書いた。

同時にこの話が来たとき瞬間的に頭に浮かんだのは「摸写についての特集なら、ムサビの組成室だろう。」…ということだった。世間的にはまだそれほど知られてはいないと思うが、模写を通した教育という意味で、ムサビの絵画組成室ほど充実した設備と内容を持った場所はたぶん他にはないのではないかと思う。ことに専任教授の斉藤國靖教授はこの面での権威と言っていい。実際自分自身の現在の技法的なルーツのほとんどは斎藤教授から来ていると言えるし、現在注目されている写実系作家たちを見ると、ムサビの出身者の占める割合がかなり高いと言えるが、そのうちのほとんどは、この模写研究の授業を通して基本的な技術を身に着けている。斎藤教授の功績は、それまで古典絵画を混合技法で解釈することが主流であった風潮の中にあって、そこに疑問を抱き、再び油彩画の基本的な接着剤である乾性油の使用の重要性に技法を引き戻したことだろう。

また「描きやすくなければ技法ではない」という教授の信念は私自身が技法を考える上でも大きな影響を与えている。…そんなことが頭にひらめいていた時、実はまったくおんなじことを考えていたヤツがいる。それが今回もう一人模写過程を依頼されていた塩谷亮。彼は私が1年間パリに行っていた間、私に代わって絵画組成室の非常勤講師をしてくれてた人物であり、同じように斎藤教授から技法的な影響を色濃く受けている。たまたま8月、ムサビの通信教育のスクーリング授業で一緒になった時に話していて、まったく同じことを考えていたことに気付いた。それぞれ何の打ち合わせをしたわけでもないのに同じように編集部の担当に模写についてならムサビの絵画組成室の斎藤教授に話を聞くべきだと勧めていた。

…そんな成り行きで成立した今回の斎藤教授のインタビュー記事。もちろん”仕掛け人”の我々もインタビューに参加したわけではないがしっかり同席、面白がってカメラを借り、インタビュー中の教授のスナップ写真を撮ったのもこの私。今回は表紙と言いインタビュー中のカメラマンと言い、ちょっとはバイト料をもらってもいいんじゃないかという活躍ぶりでございます。それにしても塩谷君、私、斎藤先生、ムサビの絵画組成室の教師陣で計15ページ強…というのはなかなか。でも、それなりの内容は持っているんじゃないかと…私個人としては思います。今回担当の編集員の女性も、若いのになかなかお見事でした。ついでに言うと、Gallery Suchiの「重力」で一緒に出品している渡抜君も、「東京国立博物館で模写をしてみる」みたいな企画で登場しています。彼がドイツでやってきた摸写作品もちょっと小さいけれどしっかり載っています。

…全く関係ないけれど、今日、組成室の教務補助Nさんが用意してくれていたおすすめのお菓子「じゃがビー」これがまたあまりにもうますぎてついつい帰りにコンビニで買ってしまった。別に私はカルビーの回し者ではありませんが、ほんとにこれ、癖になりそうです。

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