最近忙しくて、晩飯後もすぐにアトリエにこもる毎日が続いていた。久しぶりにちょっとだけ一息ついた今日、子供たちを寝かしつけようと寝室に向かった時、娘の放った一言がこれだった。
娘のこの質問が始まったのは、たぶんまだフランスにいた頃のことだったかと思う。当時娘はまだ3歳になるかならないかだった。もともと気分屋で甘ったれの彼女は、夜寝るとき、毎日その日の気分でお父さんと寝たくなったりお母さんと寝たくなったり、自分の思うようにならないとしばらくぐずりっぱなしで我々の手を焼かせていた。どちらかと言えばやはりお母さんと寝たい日の方が多く、妻は妻で、翌日の準備やら家の片付けやら、家事の疲れやら…、何とか逃れたい日も多く、私の方に気を向かせようと娘に私を勧めてみたり、わけを話して頼んでみたり、それでもだめなら怒ってみたり脅してみたり、交渉したり…、ありとあらゆる手を尽くしてきたが、相手はなかなか手ごわく、いったん言い出すと頑として受け付けてくれなかった。そんな中、ついに見つけた魔法の一言、それが「おならの日」だった。「今日お母さんおならの日なの。すっごいくさいおならが出るよ。それでもいい?」あんなに手ごわい娘だったが、この一言の効き目は絶大だった。その日以来、こちらが何も言わなくても「今日はお母さんおならの日?」「今日はお父さん、おならの日?」その答えによって寝かしてもらう相手があっさり決まるようになった。
5歳になった今でもその名残が続いている。まあ我が家の品格がどんなもんか、よくわかるというものだ。
それにしてもおならの一言ですっかり扱いやすくなった娘。その裏にはさぞかし強烈な、トラウマとなるほどの経験があったことだろう。言わずと知れた誰かの”おなら”。