冨所龍人。新潟県人である。彼とは大学3年の時から同じクラスで、最も親しかった友人の一人。大学卒業後、一度は東京で就職したものの、数年後に故郷に新潟に帰った。しばらく絵の発表から遠のいていた彼に、「白日会に出してみないか?」と誘ったのはもう何年前のことだろう、もういつだか覚えていない。その後、地味ながらもじわじわと安定した作品を出品し続け、周囲からも徐々に認められ始めた。数年前には美術雑誌の表紙も飾り、ホキ美術館にも作品が収蔵される。48歳、遅咲きの作家デビューというわけだが、ここ数年の躍進に対しても彼は全くおごることがない。学生のころからそうだったが、いつも「これでいいのか」となんだか悩んでいて、そのころはしょっちゅう描いた絵を途中でつぶしてたっけ。今では繊細な美しい女性像を描いているが、そのこととある種の繊細な心の持ち主であることとは同一線上につながるように思えるし、おごることなく、曲がったことの嫌いな性格は、学生の頃から続けていた剣道のイメージとつながる。…なんて言うと、まるで影のある2枚目の武士みたいなイメージになってしまうが、実は彼は大のプロレスファンである。特に猪木の熱狂的なファン。学生のころ、下宿に遊びに行くと、プロレス中継を観させられた。熱狂的観戦の結果、不幸にも猪木が負けると、まるで見計らったかのように同時に電話が鳴る。どうやら同じプロレス仲間のようで、漏れ聞こえてくる声から察すると、どうやら「なんだいまの試合は!」…みたいなことを言われているらしい。それに対して彼は「いや、今、いろいろ猪木も大変なんだよ…。」と、まるで関係者のように猪木の弁明を始めていた。別の日には猪木と誰だかの巌流島の決選みたいなビデオだったかを観させられた。なんだか血まみれみたいになっているすごいやつ。それを見ながら熱く語っていた内容は何だったか、すっかり忘れちゃったな。
なんだか持ち上げたり落としたりの変な紹介になってしまったが、そんな冨所龍人氏が、今回ホームページを開設いたしました。
http://tomidokoro-tatsuto.com/
興味を持った方は是非1度見てあげてください。すでにこのブログを読んでしまったあなたは、彼の作品の向こう側に、うっすらと映るアントニオ猪木の雄姿が見えてくるのでしょうか。