今、ムサビの展示スペース「FAL」で芸術文化学科の鈴木民保教授の退任展が開かれている。
鈴木教授はもともと油絵科の絵画組成室の教師であり、昨年で退任した斎藤國靖先生とともに絵画組成室を作り上げてきた私にとっての恩師。今年で退任してしまうと思うと寂しくもある。私が大学に入学した年に始まった油絵科の絵画組成の授業、学生の頃は斎藤先生よりもむしろ鈴木先生との関わりの方が多かった。一度は個展の搬入の手伝いにお宅までお邪魔したこともある。控えめで、黙々と授業の準備を進める鈴木先生には職人的な魅力があり、その朴訥とした語り口の優しさは、多くの学生たちを惹きつけていた。
豪快で押しの強い斎藤先生に対して控えめで優しい印象の鈴木先生、授業の進め方もまるで違う。斎藤先生はその時のひらめきで授業のやり方をどんどん変えていくので、下で働く教務補助達はとにかく何が起こっても対応できるような臨機応変さが求められるのに対し、鈴木先生は自分ですべてを把握し、完璧な準備を整えて授業にあたる。教務補助に求められるのはその細かな指示をきっちりこなす細心さ。全く正反対と思える性格の二人だが、この2人の絶妙なコンビネーションで組成室は回ってきた。データをきっちり管理する鈴木先生が材料学を受け持ち、古典絵画を読み込みながら独特のひらめきで分析する斎藤先生は技法を受け持つといった具合に。
通常、退任する教授は大学の美術館で華々しく個展を開催することになっている。去年、斎藤先生がしたように。http://www.osamu-obi.com/blog/2012/11/post-207.htmlしかし鈴木先生はそういった華々しい場を好まず、静かに去りたいという理由で美術館の話を辞退した。いかにも鈴木先生らしい。しかし今回、周囲から「何とか展覧会を」の声が上がり、芸術文化学科と油絵科の話し合いの結果、2号館の展示スペース「FAL」での開催が決まったのだ。実は先生、満期退任まで2年残しての退任となる。たぶん体力的にはまだまだ十分任期を全うできるのだろうと思うのだが、はやく作家として自由に制作したいとの思いもあったのだと思う。誰よりも根っからの「絵描き」なのだ。
展覧会場は、手狭なこともあり、会場いっぱいにびっしり作品が並べられている。どれも鈴木先生の人柄がにじみ出ているような、誠実で、素朴で、心から絵画を楽しんでいるのが伝わってくる、そんな展示内容だ。中には授業の時、学生たちに交じって描いた作品もある。どの作品も一見簡単そうに見えて、よく見れば実に気の遠くなるほどの手数と手間、画面上での絵具との
やり取りがあるのがわかる。背中で教えるタイプの教師。今では少なくなったのではないだろうか。
鈴木先生の言葉で私が特に気に入っているものがある。それは「絵の具を喜ぶ」という単純な言葉。解説は必要ないだろう。絵描きとしていつもそうありたいと思う。これは鈴木絵画を最も端的に表した言葉ではないか、…そんなふうに思いながらこの展覧会を観た。
まだ会期中です。でも残りわずか。もっと早くに宣伝したかったのだが、すみません。よかったらご覧ください。
2013-12-05
He encontrado este blog por casualidad y la verdad es que me parece super interesante. Saludos desde celinedion.es
2013-12-25
Gracias.
¿Es un pintor?