このブログを読んでくれている方たちの中にはなんとなく2種類くらいのタイプの人がいるようで、1つは最近立て続けに書いている、なんということのない日常の出来事やら子供の話を楽しんでくれている人、もう一つは絵の技法的な部分に食いついてくる人。例えばパリにいた時、2011年の2月あたりのルーブルでの模写について毎日メモ代わりに書いていた記事は、ちらほらいろんな人から耳に入ってくる話によると、前者の方たちにとっては退屈で訳が分からないもののようだったが、反対に後者の方たちにとっては面白く読めたものだったようだ。
まあ、描いている私の側からすれば、そんなこと関係なく、その時書きたいことを勝手に書いてるだけなのだが、そのあたりの読む側の視点がパックリ割れてしまう感じを知ってしまうと、なんだか時々バランスを取らなきゃならないような気がしないでもない。
…ということで、今回は絵の話。…といっても特別すごい話があるわけではないが、今、春風洞で開催中のヴワール展出品作のディテール画像など、いくつか。
先日は出品前日、間に合うかどうか、というところで終わってしまっていたのだが、何とか終えることができた。
この作品はもともと夏に描いたドローイングが元になっている。http://www.osamu-obi.com/blog/2014/07/post-281.htmlドローイングを描いた時点では特に油彩のためのエスキースという意識はなかったのだが、しばらくして、急に油にしてみたくなった。とはいえそのまま油彩で描くのではない。人物だけに焦点を絞って描いたドローイングを、もう一度周囲の空間を含めた画面構成として練り直し、縦構図のF10号にまとめることになった。
最近の作品は説明的な描き込みよりも空間の深さや物の量感表現に対する興味の方が増しているように思う。透明層から不透明層、その間の半透明の効果、下地が透けるほどの薄塗りからブラシストロークを聞かせたどっしりした厚塗り、筆の走るスピードの緩急…。油絵具の物質としての魅力、そのすべてを使い尽くして何とかそれを表現できないものかともがきながら、ああでもないこうでもないといまだ試行錯誤を続けている。その辺のこだわりは、一枚の小さな画像だけではちょっと伝わらない。ディテール画像で少しはそれが伝わるかもしれない。でもできれば実物を観てもらうのが1番。
…ということで展覧会、第18回ヴワール展は今週末、11月22日まで。よろしければご覧ください。