“月刊Art Collectors”12月号、

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出版物の紹介が続いてしまうが、今回、美術雑誌”月刊Art Collectors“の12月号に、いくつか記事を載せてもらっている。特集のタイトルは「美しく凄い写実画」。

私の作品は10月にGallery Suchiの「重力」展 http://www.osamu-obi.com/blog/2014/09/post-286.html に出品した50号の作品が、表紙と特集記事内に掲載されている。今回はその他にも2ページほどの記事を書いている。…海外の写実画家達の紹介。

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まったく”グローバル”という言葉が似つかわしくない私がなぜ海外作家の紹介?…と疑問符がいっぱい浮かぶ方も多いと思う。自分でもそんな気がする。なんでそんなことをする羽目になったかといえば、それは1年半ほど前にひょんなきっかけから始めたFacebookと関係がある。

「小尾さんFacebookやらないんですか?」…というような話を聞くようになったのは34年前の頃だったろうか、絵描き仲間や画廊の人からコミュニケーションツールとして便利だよ。などと勧められた。ちょうどそのころうちのパソコンにFacebook から「だれだれさんはFacebookを利用しています。」…というような招待状みたいなものが届き出し、なんだろうと本人に確認すると、私は送っていないとの返答。誰がどうやってその人が私の知り合いってわかったんだろう。と、ちょっと気味が悪いようで始めるのをずっと渋っていた。

数年たったある日、たまたまインターネットで自分の名前を検索したらどんなものが出てくるんだろうとの興味本位で試してみた時のこと。画像検索をしてみるとそんな中にFacebookのページが。「何?俺はFacebookなんてやってないぞ」と不審に思い見てみると、Osamu Obiのタイトルで確かに自分の作品のアルバムみたいなものが出てきた。そしてそこに何やら2百何人かが「いいね!」といっています。との表示。当時は全く意味が分からなかった。そのことを知り合いに聞いてみると、タイ人の誰かが小尾さんのアルバムを作ってますね。…とのこと。自分の全く知らない海外の誰かが自分の作品のアルバムを作り、さらにそれをいろんな国の人が観て、何らかの反応を起こしている。これが何か個人的な情報だったら気味の悪い話だが、自分の作品を露出させようと思った時には国境を軽々と越えられることを考えるとむしろ有効な手段なのかもしれない。どうせすでにこれだけ広がっているのなら自分の方から入ってみた方がいいのかな。…と思い至った。

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右も左もわからぬまま始めてみる。あんまりよく知っている人たちから始めてうっかり知られたくない情報を観られちゃうよりは、出会う機会の無いような遠くの人たちとつながってみたら面白そうだぞ。…ということで、まずはパリにいた時に知り合った人たちあたりから恐る恐る友達リクエストを送ってみることに。まずは海外で試運転。使い方がわかってから国内を解禁してみようかな。そんなスタートだった。だから初めは知り合いにも一切始めたことを知らせず、むしろできるだけばれないようにこっそりと…という、妙な始め方。しばらくして、以前これを始めるきっかけとなったタイ人のページを訪れ、思い切ってコンタクトを試みてみた。「私の作品を掲載してくれてありがとう。あなたは誰ですか?」彼はタイの水彩画家だった。自身も絵を描く傍ら、世界中の水彩画家の作品をFacebook上で見つけてはシェアしていた。そんな彼のタイムラインを楽しみに観る人が世界中に広がり、彼が何か作品をシェアするたびに瞬く間に100人以上の人から「いいね!」の反響が返ってくる。そんな彼がFacebookも始めていない私の作品を私のホームページで見つけ、水彩でもないのにそれを自分のアルバムに加えてくれていたらしい。彼は私がFacebookを始めたと知ると、すぐに私のアルバムの中から作品画像をいくつかシェアしてくれた。と、その瞬間、えらい事態が起きた。突然私のFacebookに大量の人々が入り込み「いいね!」やコメントが次々入り始める。目の前で次々と友達リクエストの人数が増えていく。確かその日のうちに50人以上、100人近いリクエストが入っただろうか。

そんなスタートだった。だんだんわかってきたことだが、彼のようないわば美術雑誌とか画廊、みたいな役割を果たしている人が他にもあちこちにいるようで、彼によって広まった情報によって私の作品を知ってくれたほかの国の同じような人が再び私の作品をシェアし、何度かそれに似たびっくりするような経験をしてきた。…おかげというかなんというか、当初のもくろみが当たりすぎて私のFacebookの知り合いは今でもほとんど外国人だらけ。特別日本人を拒んでいるわけではないのだが、今でも日本人からの申請は少ない。(ただ、確認がなかなか追いつかないこともあって、申請に全て応えているわけではない。)

そんなふうにして情報が広がるFacebook。自分の作品がそうやって広がるということは逆に言えば、同じように世界の情報が入ってくるということでもある。私のような写実絵画を好んで反応してくれる人からは当然同じようにそのほかの写実作家の情報が流れてくる。また当の作家たちもなにがしかの形で繋がっているので思わぬところで直接接触する機会が出て来たりする。

えらい説明が遠回りしてしまったが、そんな中で出会った写実画家たちの中から3人を今回紹介することになったというわけ。

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Facebookを通じて実感したことは、世界にはまだまだ高いレベルの作家たちがたくさんいるぞということ。ともすると、手先の器用な日本人だからこその写実絵画。世界で今、写実をやっている作家はほとんどいない。などと錯覚しかねないのだが、決してそんなことはない。実に多様で力強い写実作家たちがいたるところに存在する。むしろそうした作家たちの作品を知ったうえで日本の写実絵画を観るとき、今の日本の写実絵画がいかに狭いジャンル内に収まりつつあるかを痛感させられる。それは見る側、そして描く側双方によっていつの間にか作り上げられてしまった写実絵画というもののイメージに無意識のうちに縛られてしまっているからなのだろう。世界の写実絵画の実際を知るということは、別に世界に追い付けとか、世界に習えということを意味するのではない。日本には日本人ならではの写実があっていいはずだ。しかし外を知らず、ただ慣習的に狭い世界の中に満足してちんまり収まっているだけではこの先の発展は望めないのではないだろうか。少なくとも描き手である我々は、そんな緊張感を持って常に現在の壁を打ち破る努力を惜しむべきではないと思う。かくいう私もまだ「世界を知ってるぞ!」なんて偉そうなこと言える立場じゃ全くない。ごくごくその一端に触れはじめた程度のこと。

そんなこんなの思いを込めて、今回3人の作家たちを私の友人として紹介させてもらうこととなった。3人とはこの1年半の間に知り合うことになった。ロシアのSerge氏は始めてすぐのころに出会った最初の”大物”。以来いろいろな面でFacebook上のアド

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バイスをもらっている。アメリカのDaniel氏とは作品集の交換をさせてもらい、ドイツのDirk氏とは実際に日本で数日を共に過ごした。 http://www.osamu-obi.com/blog/2014/06/post-278.html 3人とも人物をメインに描く作家だが、その作風はそれぞれ。とても刺激的な作家達だと思う。いつの日か、彼らとともに同じ会場で作品を並べられる日が来ればいいな…などと夢見ている。どこかにそんな太っ腹な企画を実現してくれる人、いないかな?

そうそう、今回は本の宣伝だった。そんなわけで、よろしければぜひ手にとってご覧ください。ちなみに今回の紙面にはほかにもこっそり私の他の作品やら私のパレットの写真やら、ところどころにちりばめられています。よろしければ探してみてください。

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