この不純物だらけの白濁した妙な液体、なんだかわかるかな???
ここ数年、毎年春から初夏にかけて、庭で自家製サンシックンドリンシードオイルを作っているのはこのブログを読んでいる方はすでに知っているかもしれない。今年も5月の連休あたりから作り始め、そろそろできあがるところ。でもこの白い液体は今年のものではない。去年のもの。サンシックンドリンシードオイルの作り方は簡単に言えば水の上にリンシードオイルを浮かべ、毎日かき混ぜて水と空気と日光に数ヶ月晒すというもの。空気に晒されることで酸化重合があらかじめ進み、乾燥が早まると同時に粘調性が増す。水に浮かべるのは余計なゴミを水の中に沈ませることで油を洗う意味もあるが、太陽光との作用によりかなり乾燥性が高まるためと言った方がいい。試しに水を使わず日晒しにするだけのものを同時に作ってみたことがあるが、それでは大して乾燥性は向上しなかった。ちなみに日に晒すだけのものはサンブリーチドオイルと言うが、その場合の日に晒す意味は主に脱色といえるかもしれない。市販のリンシードオイルをただ窓辺において日に当てておくと数週間でかなり黄色みが抜けてくる。これはリンシードオイルの特徴で、明るいところで黄色味が抜ける。しかし逆に暗いところに長く置いておくと再び黄変してくるので注意が必要だ。無理して色抜きするよりは、リンシード本来の黄色味を計算に入れて色作りをした方が後々の黄変の影響を受けにくいといえるかもしれない。ついでにもう一つ言っておくなら、もし昔描いた、または買った油絵がなんだか黄ばんだと感じたとき、それをしばらく明るいところに飾っておけば再び色が戻ってくることもあるので、試してみたらいいと思う。
あれ、どんどん話が横道にそれていってしまう・・・。そうそう、白い液体のこと。そんな風にサンシックンドオイルを作るのだが、毎日かき混ぜていくうち、初めのうちはすぐに水とオイルが分離していたものが、2ヶ月目に入るあたりからか、少し分離しづらくなってくる。親水基ができるって言うのはこういうことなのかと実感する場面。で、去年の場合はできるだけ粘調度を高めようとかなり長期間かけて作った。いざ、完成となったとき、上澄みの油をすくった後、ごみがたまって白濁した部分を取り去って残った水を捨てようと思ったら、水が出てこない。ほとんど底まで全部が白濁した液体に・・・。どうやら水と油が完全に一体化して、卵も入れてないのにほとんどエマルジョン化してしまったみたい・・・。そのまま白い液体をビーカーに入れ、数週間放っておけばそのうち分離するかと
思いながら、気づけば1年が過ぎ、それでもちっとも分離しないまま、今日に至ったという次第。そういえば、パリの友人Kay君が数年前、1年かけてサンシックンドオイルを作ったら真っ白な変なものができてしまい、困って写真を送ってきたのを思い出す。たぶんこれだな。
http://www.osamu-obi.com/blog/2012/05/post-188.html
今日、去年作って放っておいたオイルを油・・・表面が固まって縮緬皺ができているものをナイフで破って油こし紙の上に注いで濾し、残った白い液体は捨てようかと思ったのだが、「待てよ?これで描いたらどうなるのかな???」と妙な興味がわいてきて、とりあえず別の容器に入れてとっておくことにした。瓶の外から観察すると、いくつか気泡のようなもの
が。これは気泡ではなく、水。ほとんど完全にエマルジョン化しているのだが、部分的に分離しているところもあるようだ。試しにパレット上に出してみると、普段使っているメデイウムほどではないが、マヨネーズ状のぽってりした感じがある。
絵の具と混ぜてみると、多少水分が分離した部分が水玉状に絵の具をはじくが、筆はよく動く。うまく使えば卵を混ぜずとも可塑性のあるグレーズ表現が達成できるかな?でも待てよ?水が抜けたらただのサンシックンドオイルに戻っちゃうわけで、それじゃあ結局可塑性なんてなくなっちゃうか・・・。そんないろいろが頭を駆け巡っている最中でございます。いずれにしろ、この得体の知れない液体はまだまだうなるほど残ってるんだし、そのうち暇を見つけていろいろ実験してみることにいたしますか。