アトリエ・エビスの「リアリズム塾」に続き、今度はまだこれから開講される講座のご案内。4/15・22・29(土)の3日間、広尾にある「広尾アートアカデミー」にて特別講座を担当することになっている。今回はオイルスケッチ講座。
オイルスケッチって何ですか?と、よく聞かれる。何かそういう名の特別な技法があるのかと思われてしまうようだが、そういうわけではない。ためしにネットで「oil sketch」という言葉で画像検索してみても、出てくる作品はばらばらで、ささっと描いたような油絵という以外、特に特徴的な技法があるようには見えない。(ちなみに日本語で「オイルスケッチ」を画像検索すると私の絵ばっかり出てきてしまうので参考になりません。)ただよくよく見ていくと、今の人たちが描いたであろう絵に混じって、ところどころにルーベンスやレンブラントの作品が出てくるのに気付くはず。
もともと私が「オイルスケッチ」という言葉を使うようになったのは、ルーブルでレンブラントの模写をしていた頃のこと。文献を読みあさりながら、ああでもないこうでもないと試行錯誤する中で、現在使っているメディウムにたどり着き、それを使ううちにそれが短時間で描き上げるのに向いたメディウムであると気付くと同時に、17世紀オランダ、フランドルの画家達、ルーベンス、レンブラント、ハルス・・・の写実的でありながら躍動感のある筆致を持つ作品群に惹かれ始め、それまでひたすらに時間をかけて細部を描写していくのとは別のことをやってみたいと思い始めた。そんなときに出会った画集が「Drawn by the Brush: Oil Sketches by Peter Paul Rubens」。
これがオイルスケッチという言葉との出会いだった。ルーベンスは非常にたくさんのオイルスケッチを残している。主にそれらは大作のための準備として構図全体、または部分の習作のために描かれたものだが、工房で共同制作で描かれる大作と違ってある意味では最も彼のオリジナルな作品とも言える。メモとして走り書きするように描かれた線は生き生きしていてその踊るような筆さばき自体に魅力がある。
ほとんどのものは数時間で描かれ、いったん乾いた後にさらっとグレーズによって色付けされた程度。それでもそこには恐ろしいほどの存在感がある。そんな自分の感性の最先端のような仕事がやれないものかと、向こうにいるときからいくつか実験的に始め、帰国後、それを作品化するようになったというのが私にとっての経緯。
だから使っている材料、技法的な部分では通常描いている油彩作品と何ら変わることはない。違うのは1枚にかける時間。通常の油彩作品が1枚に1,2ヶ月かかるのに対し、オイルスケッチの場合、下層描き、彩色層を各1日、合計2日間もしくはプラス1日程度で描く。当然時間が短い分描き込める面積は限られてくるため、狙いは絞られてくる。しかし描かない部分にもある密度を与えようとするために自然と筆さばきそのものに抑揚(筆圧、筆速、筆の種類…)が生まれる。結果として時間をかけた作品とは違うものになっていく。…ちょっとイメージをつかんでもらえただろうか。
実際今回の3日間の講座では1日目に画像を見せながらオイルスケッチについて、また油絵の具とオイルについての基本的な講義とクロッキー、2日目には実際にキャンバスに油絵の具を使って下層描き、3日目にグレーズを用いた彩色で完成させる。といった内容になる予定。短いけれど内容は濃いものになるはず。油絵の教室はたくさんあると思うが意外に油の種類や性質の違いについて基本的なことから教えているところはないんじゃないかという気がする。広尾アートアカデミーのホームページには(油絵経験者対象)なんて書かれちゃってるが、そういう意味では初心者にもかなり優しいはず。「私あんまり描いたことないから…」、なんてびびる必要は全くありません。経験者には経験者なりに、初心者でかたちがとれない場合はちゃんとてこ入れいたしますのでご安心あれ。
…なんだかだんだんセールストーク臭くなってきた。とにかく絵具を知って絵具と仲良くなるのが目的の3日間だと思ってもらえれば!興味のある方はどうぞ。歓迎いたします。
詳しくはこちらをどうぞ。私もこれが初の宣伝なので、まだ空きはあるそうです。http://www.hiroo-aa.jp/couse-tokubetsukougi.html
オイルスケッチってだいたいこんなもんだとわかるように制作過程の画像をいくつかのせときましょうか。
ついでにお知らせ。今、京橋のギャラリーびーたで広尾アートアカデミーオープン記念の講師陣による展覧会が開かれています。古い絵ですが私も2点ほど出品しています(案内状に出ている作品ではありません。)。今週土曜日(3月25日)午後3時からは、数人の講師陣によるギャラリートークが予定されています。私も参加する予定ですので、もし講座に興味があり、聞きたいことがある方は遠慮なく尋ねてください。展覧会会期は3月28日まで。
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