黄金の・・・。

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8月に入っての2週間は毎年“恒例の”武サ美の通信教育のスクーリング授業・・・。我らが絵画組成室では古典絵画の技法を元に下層描きからグレーズへと重層的な絵画表現を学ぶ油彩のクラスと、下地から始めて金箔を使った額縁の技法を含むテンペラ画のクラス、2週間で2つの授業を担当している。これがまたハードな内容で、内輪では「魔の2週間」ともいわれているのだが、毎年受講者も多く、皆、毎日自主的に遅くまで残って作業をするくらい、夢中になって描いている。特に2週目のテンペラクラスは通学部の学生達が1ヶ月かけてやる作業を1週間でやるため、教える側も下地の乾燥時間をコントロールしながら合間を縫っては講義をし、進行速度がまちまちの学生達のために時間差を作ってあちこちで地塗り、磨き、石膏盛り上げ、成形、ボーロ塗り、メノウ棒での磨き、2度の箔貼りと磨き、図版の転写、乳剤の種類と作り方、テンペラ絵具の作り方、そして描き方・・・などのデモンストレーションをしたり・・・、教務補助達はそれに合わせて分単位のスケジュールを組んで全て下準備を整え、また学生達の出席とりから我々の昼ご飯の手配などなど・・・、まあ、とにかく表でも裏でもてんやわんやな状態が続く。それでも学生達がいい勉強をしたと喜ぶ顔を見るとこちらもうれしくなってしまうものだ。結局のところ、毎年またこの時期が来てしまったと思いながらも、やっぱり手を抜けなくなってしまう。今年も例年通りのめまぐるしい2週間だった。1週目はまだなんとか余裕を持って働けるのだが、2週目にもなると皆そろそろ疲労も溜まってきて、ドリンク剤を飲み出すもの、時々宙を見るように魂が抜けちゃってるみたいなもの、いろいろ出てきて変な感じになっていく。

そんな中、ある日家に帰ったとき、娘がグルーガンで「まきグソ」を作っていたのを見つけた。豆粒サイズの可愛いやつ。「あったかいの、できたよ〜!」と、てのひらにのせてくれた。こりゃ面白そうだと翌日学校に持っていったところ、その翌日くらいにはいつの間にかそれが黄金色に輝く見事な「まきグソ」に生まれ変わっていた。我らが組成室の優秀な教務補助達、授業の合間を縫って自らも技術を磨くために裏で石膏盛り上げや磨きの練習をしていたりするのだが、ついでというべきか、なんというべきか、その時やっていたテンペラの授業の箔貼りの技術を駆使して放課後の空き時間に余った金箔を貼ってくれていたのだ。大体娘が「まきグソ」を作るのも、それを面白がって学校に持っていくのもすでに変だといわれればその通りなのだが、この“クソ”忙しい中、そこに金箔を貼って磨いてくる教務補助もかなりどうかしている。忙しさも限界を超えるとこんなことになっちゃうというこの感じはこの授業を経験したものでないとなかなか理解できないのかも知れない。その後もガチャガチャの石膏像やらイタリア土産のダビデ像やら、いろんな黄金像が次々生まれたことはいうまでもありません。さすがは美大の力だな!

とにかくそんなこんなありまして、今年の「魔の2週間」もなんとか無事乗り越えましたとさ。学生の作品写真が載せられないのは残念だが、今回もかなりのレベルのものができておりました。

授業の終了後にはスタッフ達そろってのうちあげ。スイカ割りなどしながらしばしリラックスした時間を過ごさせていただいた。ふと気付くとポケットの中で携帯が鳴る。見ると妻からのメッセージが。

「明日からは家族のスクーリングが待ってるぞ!」

・・・・・・。

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