昨日の雪は凄かった。数日前から雪の予報は聞いていたものの、ここまでしっかり降り積るとは…。ちょうど雪の予報の次の日が息子の高校受験当日と言うこともあり、ぎりぎりまで天気予報とのにらめっこの毎日だったが、同じ予報を見ても高校受験の息子と小4の娘とでは反応が全く真逆。雪で交通が止まっちゃったらやばいぞ、という息子の心配顔をよそ目に、ひたすら雪が積もったら何しようか、と楽しみ顔の妹。親の私はどうか…。雪が降ったら待っている雪かき作業…、何せ玄関から道路まで30メートル以上、車の車庫からでも20メートル以上ある通りの雪かきは、想像するだけで恐ろしい。以前は雪が降ったらかまくら作り、という子供の頃からの強迫観念にも近い衝動に駆られてそんな雪かきも楽しんでいたのだが、さすがに最近は“お年頃”というか、“お歳より”というか…。さすがにしんどくなってきた。だから当然のことながら小学生の娘よりは中3の息子側の立場…、と思う反面、まだ今でもどこかにくすぶる子供の魂が隠れているようで、無意識に「絶望的にたくさん降り積らないかな。」なんて想いがくすぶっているのも否定できない。だから雪が降り始めたとき、みぞれと言うよりさらさらしたのが降ってきたのを見て、一瞬「しめた!」と思っちゃったのは事実。
午後から降り始めた雪は、3時には本格的に積もり始め、すでに10センチを超えていた。この調子で夜中まで降り続けると30センチは超えそうな勢い。今日中に1度雪かきをしとかないと車も出せなくなってしまいそうだ。明日の息子の受験、朝に車で駅まで送っていく事を考えると、このまんまでほっとくわけにもいかないか…。
と、重い腰を上げ、庭に出て行く。外ではすでに娘が友達を連れてきて、ソリで遊んでいた。妻も出てきて雪かき用のスコップで作業を始める。これまでも大雪が降ったことはあるが、今回はいつにも増して雪質が良かった。ちっともべたつかず、下が水浸しになってもいない。まだ踏まれていない雪はとても軽かった。端からずっと車の幅で道を作りながら一カ所に雪を集めていく。…初めはそれで良かった。時と共に、積み上げられていく雪を見るにつれ、いつもの”強迫観念“がむくむくと…。結局始めてしまった。かまくら作り。しんどいのはわかっているのにやらずにいられない。せめてもの自分の中でのブレーキとして、「以前のよりももっと大きく!」をやめてやや小ぶりサイズにとどめたつもりではあるのだが…。4時過ぎから始めて暗くなるまで。最後には明日受験の息子まで出てきて親子で仕上げ。帰ってきたらもうへとへと。今日は全身筋肉痛。やりたいこととやっていいこととのギャップを思い知らされている。
そんなにまでして頑張った雪かきだったが、さらに雪は降り積り、結局翌朝自動車を出すことは不可能だった。朝には車道も凍り付いていたが、何より我が家の場合、その車道に出るまでが一番の難関。いったん滑り始めると、もう前にも後ろにも身動きがとれなくなる。
朝起きて、電車の運行状況を調べると、一応平常運転と言うことだった。万が一電車が遅れることも考えて、少し早めに歩いて出発させることにした。駅についてもし止まってしまっていたら他の方法で学校まで行かせなければならないので一応駅まで一緒に歩いて送ることに。家から駅まで30分程の雪道を息子と歩いた。畑の真ん中の道、車が通った後の轍の上を歩く。日の出間もない薄暗い道。車道に出るとまばらに車は走っていたが、アスファルトの上まで積もった雪は溶けておらず、ちょっとした坂ではスリップする車も…。駅にはいつものように出勤するサラリーマン達。革靴のままの人も多い。幸い電車は多少の遅れはあるものの動いていた。改札で息子を見送り再び家路につく。
元来た畑道に入る頃、ようやく日が差し込み始め、温められた雪のためか畑の上に霧がかかり始めていた。畑の真ん中を通る頃にはいよいよそれが濃くなり、いつもの日常的な風景が幻想的なものに見えてくる。誰も通らぬ明け方のかすんだ雪道を一人で歩く。なかなか得がたい時間。
一人で満喫するのももったいないので家に電話し、娘を呼び出して畑をもう一回りすることにした。大喜びで走って出てきた娘。畑道を歩くのにも子供は車の轍ではなく、わざわざ深く積もったところを選んでズボズボやりながら歩く。さっきとは別の道に入ると今度はまだ車も通っていない道。30センチの雪に足跡をつけながら歩く。一歩一歩足を引き抜くように高く上げながら…これが意外に大変。同じように長靴を履いていても娘の方が丈が短い。歩くたびに跳ね上げた雪が靴の中に入り込む。そのうち「足が冷たくて、痛いよ-。」と泣き言を言い出すが、今さら引き返すにも進むにも近道はなく、ただ歩くしかない。ふと先を見るとそこには方輪を畑に落としたまま乗り捨てられた車が…。へこたれそうな娘は途中で何度も長靴を脱いで雪を出し、仕舞いにゃ「もう雪はいやだー」なんて言いながらの帰宅。でもいったん家で暖まった後は再び早めに家を出て登校班の友達と遊ぶんだと言っていた。
息子も無事試験を終えて帰ってきた。娘は学校から帰ってきてすぐに遊びに出ている。とりあえずこの雪の日を乗り切った。さて、うちの車はいつになったら無事自宅の庭から出て行けるようになるのだろう。