先週の話し。海外から5人の画家達が来日した。イタリア、スペイン、ドイツ、ロシア、アルゼンチン・・・。国籍も様々。共通するのはいずれも一流の写実の腕を持つ画家達だと言うこと。スーパーリアリズム、ハイパーリアリズムに分類される非常に細密な描写を得意とする作家が中心だが、必ずしも写真的表現の作家ばかりではなく、伝統的な意味での写実力の高い作家もおり、その表現もそれぞれ。いずれにしてもみな、制作に時間のかかるタイプであることは共通しており、中にはたった1枚の絵だけを描くのに3年を費やす強者も・・・。
アトリエで撮った集合写真の左から順に作品を紹介しておくとしようか。アルゼンチン人で最近マドリードに移り住み始めたMartin LLamedo,
ロシア人画家Alexander Timofeev,
ドイツ人画家Philipp Weber,
一番若いイタリア人画家Marco Grassi,
スペイン、マドリード在住の Arantzazu Martinez.。
なぜ彼らが日本を訪れたかについては近いうちにまた書くことになると思うが、そんな彼らが先週うちのアトリエを訪れた。5人のうちの一人、Arantzazu は一昨年スペインを訪れたときに直接会ったことがあるが、。実質2日のスペイン滞在 (Part-1) 他の4人は今回が初めて。・・・とはいえ全然初めて会った気がしないのは、すでにFacebook上で知り合って、メッセージのやりとりもある人たちばかりだから。羽田空港に迎えに行った際も遠くから見つけて名前を呼び合うほど。初対面の緊張感など全く感じない出会いだった。空港からホテルまでタクシーの車中でもそれぞれの国での写実絵画の扱われ方についてなど、ざっくばらんな話しが続いた。その日はタクシーに同乗して、無事ホテルのチェックインを見届けるまで。翌日の朝に彼らをアトリエに迎えることとなった
アトリエにはいくつかの描きかけの作品と、現在進行中の大作が壁に立てかけてある。それらを前にお茶を飲みながら時間を過ごす。正直言って私は英語はまるでだめなのだが、それでも絵描き同士、考えることはなんとなく通じるから不思議なものだ。「この絵はあとどのくらいで完成するの?」「サンシックンドオイルを自分で作ってるんだって?」パレットに顔を近づけ、「スパイクラベンダー使ってるの?」・・・・・・。
最終的には自分の使っている絵具や(たとえばシルバーホワイトは現在ヨーロッパではほとんど作られていない。)メディウムの描き心地を説明するためにパレット上で実際に描いてみる。しばらく描いてから、「はいどうぞ。」と筆を手渡すと、感触を確かめるように絵具をいじりだし、「自分は普段こんな筆を使ってこんな感じに描いている」などと見せてくれる。こうなってくるともはや言葉はいらない。筆の動きや筆圧のかけ具合などを見れば何を言わんとしているかは手に取るようにわかる。絵筆で対話が成立するのは絵描きの特権だな。勿論絵画も国や文化によって感覚的な違いはあるのだろうが、それを飛び越えて理解できるもは確かにある。
突然嵐のようにやってきた彼らは、また嵐のように去って行った。次回またどこかで会える日が来るのが楽しみだ。